◇いろいろな人と一緒にやっていることに意味がある
このプロジェクト、あるいは小屋のデザインに対し、いろんな賞を十数件いただきました(グッドデザイン賞、日本建築美術工芸協会のAACA特別賞など)。この活動に反響があるのかなと思っています。小屋を造るのには1万人以上がかかわっていただきましたが、その方々に対する賞だと思っています。賞の1部の講評部分を少し紹介します。
「現代版茶堂といえる」(講評の一部を読む)。四国には茶堂というお遍路などをもてなす東屋があったんです。今もあります。その小屋によって、地元の方々はお接待をするわけです。これは公的でも私的でもなくて、何となくあって、何となく使われているもので、現代版茶堂とはうまく表現されていると思います。
「歴史的に見て、1200年以上続く宗教的習慣に、また暮らしや風土にどう向き合うか、建築という形で示したものである。国内でも例を見ない精力的取り組み」(講評の一部を読む)。まあ、見ないでしょうね。長いことやっているので価値があるかなと思います。そしていろいろな方々と一緒のやっていることは、意味があると思っています。
「20年の歳月をかけて1つ1つ、地域の方々に呼びかけてつむぎ出されるように造られた。行く先々でお遍路さんをサポートする小屋を、すべてボランティアによって造り出す行為そのものが、現代参加型アート。ひたすら脱帽させられる」(講評の一部を読む)。
「何よりも2001年から造ってきたことに圧倒される。しかも、場所の特殊性を生かし、地元産の部材によって、今では56カ所の小屋(受賞時点)→ここが大事なところですが→これまでどれだけの多くの人が利用し、何を考え。そしてどのような交流が生まれたのだろう。支え合う精神、無償の愛が結実した素晴らしい取り組みに、心から拍手を贈りたい」
大勢の方々が心を1つにして、一緒に無償の行為として造っていただいたというのは、社会的に価値あることだと私は思っています。小屋はただでできた小屋もありますし、800万円くらいかかったものもありますし、いろいろあります。地域地域によって、形も費用も作り方も、いろいろです。それもみんな地元の方々らが心を1つにして造ってくださったので、意義のあることだと思います。
◇お接待は四国の宝、日本中に広がることを願う
小屋を造る際に現場で、私や支援する会の役員だけで造ったものもあります。現場で釘1本1本を打っていきます。釘1本から小屋ができていって、四国中に89棟できて、それを使っていただき、支え合うなどの気持ちが四国から日本、いろんな所に広がっていくのを、強く願っています。
遍路やお接待は世界でも例を見ないシステムで、四国の宝だと思っています。その宝が日本に広がっていけばいいなあとイメージして、私たちはずっと造らせてもらっています。そうすれば社会が少しでも柔らかく、優しくなるんじゃないかと思っています。