「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」を支援する会は2021年3月20日午後2時から、大阪市阿倍野区阿倍野橋筋3−10、あべのベルタ3階、大阪市阿倍野市民学習センターの講堂で、第14回総会兼記念講演会を開きました。14回総会は2020年3月に東京で開く予定でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大のために、中止・延期したため2年ぶりの総会で、来場者は約60人でした。
最初は総会。会計報告は2年分をまとめて行いました。2019年は一般勘定の収入(会費など)133万2287円▽支出は小屋建設にあてる建設勘定への振替100万円を含めて174万454円▽2018年度からの繰越金を計算したうえで、2020年度度への繰越金179万1134円。建設勘定では小屋の建設がなく、支出は0円。
2020年度は一般勘定の収入(会費など)162万8506円▽支出は48万8294円▽2019年度からの繰越金179万113円を含めて2021年度への繰越金293万1346円。▽建設勘定はヘンロ小屋57号・土成の建設に200万円を支出。▽一般勘定と建設勘定を含めて、2021年度への繰越金は328万1493円です。
活動報告では、2020年3月に完成したヘンロ小屋57・土成(徳島県阿波市)を報告。2020年に総会が開かなかったために役員会での選任という変則的になっていた新役員(梶川伸会長、藤澤久弘副会長、柴谷宗叔副会長、大塚仁事務局長)の承認をお願いしました。
総会の後、メーンの記念講演会に移りました。まず、四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクトの主宰で建築家の歌一洋さんが「プロジェクトにかける思い」と題して話しました。時間の関係で、47号・大根(徳島県阿南市)と57号・土成に絞った内容でした。大根は東日本大震災(2011年3月11日)の後、慰霊の思いを込めて設計しました。建設作業は地元の方々のボランティで行ったことを紹介。「小屋の中心の柱は少し浮いている。五重塔などに使われる手法で、地震に強い」と説明しました。
土成は三木武夫・元首相の実家跡地を阿波市が「おもてなし公園」として整備。市と奈良県からの要請で、公園の休憩所を兼ねたヘンロ小屋を建設した経緯に触れたうえで、「2棟続きの設計は、同行二人をイメージした」と語りました。
また、このプロジェクトがグッドデザイン賞などを受賞していることを述べ、「プロジェクトに関わった人は1万人を超える」と感謝を伝えました。そのえうで、「四国のお接待の文化が、日本中に広がってほしい」と締めくくりました。
続いては女優、歌手など多彩な活動をしている藤田賀子さんのステージ(ピアノは菊池麻由さん)。藤田さんは歩き遍路を続けています。四国で入ったうどん屋さんで、たまた歌さんに出会ったエピソードを明かして、ステージが始まりました。その縁で、休憩したヘンロ小屋には印をつけながら歩いているとも。
藤田さんは自らの遍路体験を語りながら、その体験から生まれた歌を披露しました。雨に降られることも多かったので、「雨にも負けず」という歌も。
高知県の思い出では「子どもたちのたくさんの道しるべがある。『会うことはできませんが、応援しています』と書かれていた」を、見えない交流に励まされたことを話し、そのことをテーマにした曲も歌いました。
藤田さんは新型コロナウイルスの影響でコンサートができず、1年ぶりに人の前で歌ったそうです。「これからは1年分を取り戻す遍路や歌の活動をしたい」と語りましたが、目が少しうるんでいました。
最後は作家で高野山本山布教師の家田荘子さんの講演「四国遍路とおもてなしの心」でした。家田さんは「つなぎ歩き遍路をしている。88カ寺を12回に分けて月々に歩くと、1年で回れる。今は12周目の後半を歩いている」と、自らの遍路を説明したうえで、体験談を中心に語りました。
初めて1人で歩いた時、1番・霊山寺では雨が降り、雷が鳴っていたと振り返りました。「怖くて足が出ない。すると左後方から男の人の声が聞こえた。『人生と同じだよ』と」そんな思い出に言及し、その声に押されて遍路を始めたと話しました。それからその声が何だったかを考え、3周目の時に、「大師堂があるので、お大師さんの声だったかもしれない」と思ったそうです。
女性の歩き遍路にとって、悩みのタネのトイレにも触れました。「12番・焼山寺に登難所“遍路ころがし”にトイレができた。トイレがあるということは、汚物を処理してくださる片がいるわけです。そんな方々に支えられ、歩かせてもらっている」。高知県の室戸岬に向かう途中にある夫婦岩のトイレも通り上げました。「牛乳瓶に花が生けたあった。人の心がしみて、涙を浮かべる」。そして、「優しさが心にしみると、自分も他人にしてあげたくなる。そんなことを教えてくれるのが遍路」と語り、遍路に出ること聴衆に勧めました。