「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」を支援する会は2022年4月2日午後1時半から、徳島市藍場町2−14、あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)5階の会議室6で、第15回総会兼記念講演会を開きました。新型コロナウイルスの状況を見ていたため、開催決定の判断が遅れ周知不足でしたが、大阪府や香川県から足を運んでくださった方もいて、参加者は30人余りでした。
総会は会計報告・事業報告が中心で、所用時間は10分あまり。2021年の会の収入は、会費(会員203人)と寄付金で109万2826円と報告。一方、徳島県阿波市に計画したヘンロ小屋58号は地元の了解が得られず、建設を断念。このため、小屋の建設はありませんでした。58号建設のために購入した資材は、次の小屋建設に回すことにしました。事務局長が以上の説明をし、了承を得ました。
メーンは講演会でした。まず、プロジェクト主宰者の歌一洋・近畿大学元教授(建築家)が、プロジェクトにかける思いを語りました。例に挙げたのは、徳島県内に建設した16棟の小屋です。映像を示しながら、地域性と物語性を考えながら設計したことを伝えました。また、この活動を通して感じたことに言及。「小屋の建設は地元の方々が中心で、私たちはそれをサポートしているだけ。プロジェクトを通して、四国の人の優しさと温かさを知った。利他の精神が、四国から世界に広がってほしい」と締めくくりました。
今回のゲスト演者は、国際日本文化研究センターの細川周平名誉教授でした。細川さんの専門分野は、近代音楽史、日系ブラジル文化史です。しかし。2019年に母親が亡くなったことの喪失感もあって遍路をしたそうで、自らの体験から得たもの、感じたことを話しました。
細川さんは講演前の2日間、遍路道を歩き、それを話の導入にしました。12番・焼山寺(徳島県神山町)から山を下りてくる際、道からそれたそうです。「迷ってしまって、あせっている時、前夜に同宿だった人に声をかけられた。その人は民宿の送迎車で温泉に送ってもらう途中。私も車に乗せてもらい、何とか最終バスに間に合って、13番・大日寺(徳島市)に行くことができた。一瞬の出会いの奇跡。世の中にはいろいろなことが起きているが、人は人とつながっている、ものとつながっていることを実感した。それが遍路の満足感になる」と語り、その体験から「世界の人々と何ががつながっている」と感じたといいます。
遍路の良い点については「昔から道を歩いているという安心感がある。これは何事にも代えられない。遍路の格好をしていると、仲間に見え、安心感と信頼感を覚える」と分析しました。
遍路の特性についても触れました。「観光旅行だ、ともし失敗したとしても、『しくじった』で終わりになるが、遍路では失敗も、ものを考えるヒントになる」と感じたそうです。考えることの1つが死者のことで、「遍路は死者を考える旅」と語りました。「死者を忘れない行動は、整理をつけること。生きている人の都合で考えると、暴力になる。死者のことを考えると謙虚になる」と語り、今の世界状況を考えるヒントを示唆しました。
講演の詳細は後日、ホームページに掲載します。