「四国八十八ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」を支援する会は4月23日午後2時から、高知市のちより街テラス3階会議室で、第16回総会兼記念講演会を開きました。出席・聴講者は24人でした。
最初は総会。2022年の活動報告として、徳島県阿南市にヘンロ小屋58号・月夜を建設したことを、事務局から報告。また、既設の小屋の点検・修理も新たな活動の柱の1つに据えたことから、徳島県阿波市の45号・空海庵切幡のペンキ塗装に支援する会から費用を支出した事を説明しました。さらに、社会貢献賞を受賞したことを、映像などで紹介しました。
総会は15分ほどで修了し、メーンの講演会に移りました。演者は2人で、まず演壇に立ったのは、プロジェクト主宰者の建築家、歌一洋・元近畿大学教授。高知県で建設した小屋の写真を示しながら、各小屋の設計趣旨を説明しました。また、「小さな空間にも大きなスト−リーがある」と述べ、反社会的勢力が入り込むのを防いだ象徴として、「住民力」という文字を刻んだ石碑のある33号・宿毛(高知県宿毛市)など、小屋まつわるストーリーを語りました。
プロジェクトにかける思いにも言及しました。遍路やお接待の文化は、世界に類例のないものとして、「遍路文化が世界に広がってほしい」としめくくりました。
メーンの演者は、高知県土佐清水市文化財保護審議会会長、東近伸さんで、演題は「真念庵とあしずり遍路道」でした。真念は江戸時代の中期、大坂・寺島に住んだ僧で、四国遍路の“ガイドブック”を出版し、遍路を庶民のものとしたことから、「四国遍路の父」とも称されます。真念は地元の人と協力し、37番霊場・岩本寺、38番・金剛福寺、39番・延光寺の3つの寺を結ぶ中間地点(土佐清水市・市野瀬)に大師堂を造りました。真念庵と呼ばれています。
真念庵は老朽化のため、2020に解体して建て直しました。その際、東近さんは庵に奉納されたものなどの調査に当たりました.
講演で東近さんは、庵の主だった所蔵物を紹介。弘法大師座像、地蔵菩薩立像、享保元(1716)年寄進の線香立て、享保8(1724)年の銘のある鉦鼓、宝永2(1705)年に讃岐の人から親の供養のために田を寄進すると書かれた位牌などの映像を写し、解説を加えました。その上で、「仏教民俗資料が保存され、近世から近に至る四国遍路と真念庵歴史を伝えている」とまとめました。
会場には高知県香美市のヘンロ小屋28号・松本大師堂の建設にかかわり、小屋でのお接待をしている人たちも姿を見せました。真念庵の改築にあたっては、香美市から土佐清水市まで団体で2度出向き、支援したそうです。このため、講演会は3年ぶりの交流の場にもなりました。