「四国88ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」を支援する会第11回総会兼講演会

 「四国88ヶ所ヘンロ小屋プロジェクト」を支援する会は2月4日(土)午後2時から、高知市五台山4200−6、高知県立牧野植物園の映像ホールで第11回総会兼記念講演会を開きました。参加・聴講者は25人でした。

 まず総会を開きました。森英雄・事務局長が2016年度の会計報告と事業報告。建設した小屋は55番・横屋(愛媛県新居浜市)の1棟に留まったため、プロジェクトの周知と協力依頼を中心にした講演会の開催など、ネックになっている土地探しのための新たな行動を報告しました。また役員改選では、依光正隆さんの新しい高知支部長就任が承認されました。


↑まず最初に支援する会の事業報告と会計報告


 総会は10分あまりで終わり、続いて記念講演会に移りました。最初の演者はヘンロ小屋プロジェクトの主宰者、歌一洋さん。「ヘンロ小屋造り16年・さらに思いをこめて」が演題でした。歌さん1号から55号までのヘンロ小屋の映像を写しながら、設計趣旨や小屋に託した思いを語りました。

 ヘンロ小屋の建設にはさまざまの方法があります。地域の人々の寄付金集めによるもの、信用金庫の協力、亡くなった身内のお遍路さんへの供養、地元人のたちの手作り、支援する会のメンバーによる手作り建設などです。歌さんは、かかわった人をヘンロ小屋の柱にたとえ、「柱の1本1本は、手を貸してもらった1人1人」と語り、「たくさんの人と、四国の優しさと温かさに支えられて、プロジェクトを進めることができた」と強調しました。最後は「へんろ文化を世界にに広げていけば、良い社会になる」と締めくくりました。

↑歌さんがプロジェクトへの思いを語った


 今回のメーンの講演者は、四国霊場31番・竹林寺の海老塚和秀住職で、演題は「四国発信! これからの時代、これからの生き方」でした。海老塚住職は自身も歩いて四国を回ったか ことががあり、あめやバナナ、おむすび、100円玉などお接待を受けたことを披露。「ブンタン5つをもらったことがあって困った」と笑いを誘いながら、四国に根づいたお接待が、「布施」の心につながっていると、話しました。

 四国の人のお遍路さんへのかかわりに関して、海老塚さんは訪ねてきた若者の例を挙げました。若者はニートで、家に引きこもっていたそうです。それでも一念発起して、遍路に出ました。自分を見つめ直すために、1人で静かに歩くのがいいと思ったからです。ところが、訪ねてきた若者が言ったのは、「四国の人はうるさい。自分を1人にさせてくれませんでした」ということでした。四国の人のお接待の気持ちの強さを物語っているわけで、遍路を終えた若者は「世の中に着地し、社会に帰っていった」そうです。

 布施は「無財」であってもできると、満員のバスでお年寄りに席を譲る例も挙げました。「席を譲ってもらった方は『ありがとう』だろうが、譲った方も、そうすることによって少しでも心を清めることができるわけで、自分の前にお年寄りが立ってくれたことに『ありがとう』の気持ちを持つ」として、布施の本質を説明しました。

 海老塚住職はそれらの話を総合して、「現代おける四国遍路の魅力」として、4つことを挙げました。まず、「四国は安心して迷子になれる場所」です。親切な四国の人(引きこもりの若者の言う「うるさい四国の人」)のために、迷子にならないし、迷子になっても大丈夫、ということです。

 2つ目は「心のチャンネルを変える」。四国を歩いていると、全く違った心の持ち方、考え方に出会うことがあり、自分のとらわれていた心から解放されることがあるということを、インドの僧、アサンガ(無著)の例を出して解説しました。アサンガは弥勒菩薩に会いたいと思って修行を進めます。2度挫折して山を下りようとしますが、黙々と1つのことをしている人を見て思い直します。3度目に挫折して山を下りる時に傷ついて動物を見つけ、傷口のウジを口で吸い出していると、弥勒菩薩が現れたという逸話です。

 3つ目は「お四国病院」「お四国大学」。四国は心身ともに総合病院のような作用をもたらすことです。

 4つ目は「心のGDP」。GDPは「国内総生産」のことですが、海老塚住職は「心の価値を図ることができるとしたら、遍路はその価値を高めるように思う。『四住期』というヒンズー教の人生に対する考え方がある。最後に訪れるのは「遊行期」。一切を捨てて自分の精神を充足させていく時期のこと。定年などで第一線を退いた後、自分を求めて回っているお遍路人を見ると、遊行期を思う」と語りました。そのうえで、「四国には大きな産業はないが、心というものさしでみれば、相当高いものがある」とまとめ、「お遍路が日本を変えていく」と、歌さんと同様な結論で話を終えました。

 講演の後、海老塚住職の案内で、植物園の隣の竹林寺を参拝しました。宝蔵では重文の仏像の説明があり、旧本堂、大師堂の場所も教えてもらいました。

↑竹林寺の海老塚住職が講演


↑海老塚住職の案内で竹林寺に参拝
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